読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

行き遅れ(死語)

 私が子供のころには「女が大学なんかに行ったら、行き遅れる。やるとしてもせいぜい短大まで」と主張する大人はごろごろいました。バブルのちょっと前だったと記憶していますが「女はクリスマスケーキ」という言葉もありましたっけ。そのココロは「24まではどんどん売れるが、25を過ぎたら価値がなくなってたたき売り」つまり結婚適齢期は24歳まで、という主張でした。そういった時代ですから当時の「高齢出産」の定義は「30歳過ぎての初産」。今から考えると信じられない主張ですが、「医学的な“正常”」を「社会」が作っていた時代だったのでしょう。おっと、これを「過去形」で言って良いかどうかはまだわかりませんね。

 本日の読書記録は、そういった「昔」のお産の本です。

【ただいま読書中】『30歳前後の初産と無痛分娩』宮下祥 著、 日本文芸社、1970年、500円

 本書の表紙カバーに母子が写っています。赤ちゃんの姿には別に違和感がありませんが、お母さんの方は明らかに昭和の化粧と髪型と服装です。いやあ、40年以上経ってこの母子は現在どんな姿になっているのでしょう?

 「高年出産は未熟児が多いのではないか」「年を取ってからの子供は頭がよいのではないか」などと昔は言われていたそうですが、本書でそれはばっさりと否定されています。ただ、産道の軟化が若い人の方が起きやすいので、高年初産の場合は難産になり易いかもしれない、とは書かれています。そういえば「母体の老化に伴う卵子の老化」が言われ始めたのはつい最近のことでしたね。当然本書にそんな記述はありません。

 「家族計画」(避妊のため、ではなくて、合理的な出産計画のこと、と本書では主張されています)のために知っておくべきこととして、男女の性器の違い、排卵周期や月経の意味、具体的な避妊法などについての基礎的な解説があります。そういえば70年頃に私は友人が学校に持ってきた北欧(スウェーデンだったかな)の性教育の教科書の日本語訳を見て、そこでこういった「基礎的な解説」を具体的に知りましたっけ。北欧だと「高校生が知るべきこと」が、同じ時期の日本では「結婚してから知るべきこと」扱いされていたわけです。さらにこの時期、日本では「性教育」は「女子のためのもの」で男子は放置されていました。今はたぶん変わっているでしょうけれど。

 そうそう、本書には避妊の方法も載っていますが、たとえばコンドームの装着法や使用法や注意点は、私が見た北欧の教科書ではとても具体的だったのに対して、こちらの『30歳前後の初産と無痛分娩』ではなんだか観念的というか通り一遍の記述になっています。これでは避妊失敗を増やすだけではないかしら。

 本書では「無痛分娩」がわざわざタイトルに挙げられていますが、本文で扱われるのは4ページだけです。無痛分娩は「異常なお産」としてあまり詳しく述べる必要がない、ということだったのかな。だけどそれならタイトルは何だったのかしら?

 ただ当時の日本では、お産がらみとはいえ、セックスを扱う本はそれだけで衝撃的な本だったはず。著者がいろいろと言葉を選んで書いているのが、容易に見て取れます。ただ、半世紀経って日本人はセックスの知識に関してどのくらい進歩しているのか、とも思います。こんな古い本程度の知識も持たない日本人はまだごろごろいるんじゃないかしら。