椰子のかげにて - 吉田嘉七 ガダルカナル戦詩集より

椰子のかげにて - 吉田嘉七

生とはいずれの時を言ひ、

死とはいずれの日を言ふや。

弾丸のとだえしひとときの  たまのとだえしひとときの

夕浪くらき椰子林の

砂の墓べに歩み来ぬ。

苦しき戦耐えしのび、    くるしきいくさたえしのび

友は仆れぬ、きぞの宵。

南の島に人知れず

屍はよしや朽つるとも

君は生きたり、わが胸に。

友よ、夜空を仰ぎ見よ。

黒雲空をおおふとも

黒雲月を隠し得ず、

ひかり地上に滴るを。

われらは勝たん、戦わん。

葉末の濡れて白がねの

千々に零れし椰子の木の  ちぢにこぼれしやしのきの

白き肌に弾痕は      しろきはだきにたまあとは

ささくれ立ちて残るとも、

耐えて立てるを、友よ見よ。